■2016年8月の「絵てがみコラム」
 

もう一月くらい前のことになるが、折角京都に行ったのだからもう一枚くらい描くことにしよう。
何度も京都に行っているのに一度も行ったことがなかった「伏見稲荷大社」、朝からギラギラ太陽が照りつけているが早めにホテルを出て、イノダコーヒー本店で美味しいモーニングを食べて、京阪電車に乗り込む。駅からは外国人観光客の後について行けばたどり着けるだろう…正解!朱色の大きな社殿に迎えられ、朝からそこは賑わっていた。
なんでも外国人観光客アンケートで「京都で行って良かった所」人気ナンバーワンを何年も保持しているのがここ「伏見稲荷大社」。数年前に鎮座1300年を記念して改修、塗り直しなどを済ませたばかりで歴史の中にもピカピカの鮮やかさが。全国30000余りのお稲荷さんの総本山。有名な千本鳥居が多くの観光客を飲み込んでいく。「JAPAN・京都」のポスターや映像でよく見るあの朱色の鳥居のトンネル。祈りへの感謝として奉納されて、どんどんどんどん山の上まで増え続けている奉納鳥居。鳥居の大きさや場所によって奉納金額も変わるちょっと現金なものだが、朱色のトンネルはフォトジェニックでとても印象的だ。その鳥居は「赤」ではなく「朱・あけ」と呼ばれる稲荷塗り。生命や大地、生産へのパワーなどにつながる五穀豊穣を祈る色と言えるだろう。外国人観光客へのインパクト充分。なるほど人気の意味がよく分かる。
そして、世界の観光地「京都」はさすがだな〜と感心することがいっぱい。トイレは多く美しく、お土産屋さんのおじさんもおばさんも、片言ながら外国語で商品説明をして、笑顔で接客。注意事項の看板も多国語で表記、お参りの仕方のパンフレットも多国語で無料、分かりやすい漫画。ほんと! 京都! さすがだわ〜!

 

 
 
 

台湾の暑さを身体に蓄積したまま、ちょっと野暮用で京都に行ってきた。夏の京都の暑さと言ったら…!あっさり台湾の負けである。容赦なく照りつける太陽と、盆地の地面から蒸しあげられるような熱気。クールダウンの風もスコールもなく、セミも高らかに鳴いていた。それでも、寺院の広い畳の間に抜ける空気と静けさは京都の醍醐味かもしれない。額に流れる汗も、す〜っと引いてゆく。やっぱり夏の京都も悪くないなって思ってしまう。
さて、リオオリンピックも残すところわずか、連日日本選手の大活躍で盛り上がっている。逆転勝利も多く、粘り強く根性を発揮する選手たちに頭が下がる。毎日毎日すごくすごく練習したんだろうな〜親も兄弟も恩師も…もうめちゃくちゃ頑張ったんだろうな〜。その成果が思いっきり実った強い人に「おめでとう〜!!」
まだ夏のさなかではありますが、各講座では秋のクラスの募集が始まっております。8月中にお申込みいただくと入会金の割引特典がある講座も。季節感を大切に親しみやすい「はがき絵」を練習していきます。
ご興味がおありの方はWhat's Newから直接各講座にお問い合わせください。

 

 
 
 

中国式庭園を見るのが実はとても好きである。水墨画のような自然とちょっと計算された様式美が隠されていて興味深い。
新生公園の中に移築された1750年代の福建から財を成した資産家の邸宅。門柱や扉の彫刻など見事で当時の富裕層の暮らしぶりがうかがえる展示がされている「林安泰古厝民族文物館」。2000年に一般公開されるようになり2009年の台北国際花博にちなんで庭園も拡張され展示館となった。地元の小学生の社会科見学にぴったりという感じだが、私たちにもわかりやすく、当時の趣味人の優雅な隠居生活美というものを感じ取ることができる。
入口できれいな日本語のパンフレットをゲット! 入場料無料なのに素晴らしい! そこでかねてから気になっていたその様式美の呼び名を知ることになった。庭の起伏に沿って雲の流れのように連なる白い壁を「雲塀」。そこに壺や花や果実(桃やひょうたんなど)蝶の形などにくりぬかれて、断面は赤、枠には墨色のレリーフの額縁のように中空の窓があしらわれている、景観の飾りにもなり、景観を切り取ることにも。それを「枠景」と呼ぶと。思えばずっと昔20年くらい前に蘇州の名園拙政園でも、この枠景にとても関心を持ったことを覚えている。台湾の板橋林家花園にも…台北からタクシーを飛ばして見に行った事も。人が作るものが好き、景色の一部を自分の感覚で切り取る自由が好き、大胆でユニークな墨色の枠は、ちょっぴり私自身の絵に似ているのかもしれない。
あの枠にどの石を入れようか、どの枝を入れようか…カメラのレンズを覗きながら向こうのもう一つの景色を楽しむ。古の人もそんな楽しみ方をしたに違いない。

 

 
 
 

台湾の夜は夜市抜きには語れない! 昼間の暑さがちょっと緩んだころ何処からともなく人が湧き出てきて、台北市内のいくつかの夜市が賑わう。
私たちも小規模ながら地元の常連客で人気だという「臨江街観光夜市」に繰り出してみることに。小さな食べ物屋台、スィーツや雑貨の出店、ちょっと懐かしい縁日を思い出す…。何を買えばいいのやら…小さな豆電球に照らされた、ちょっと怪しく怖いような…ドキドキしながらプラスチックの小さな椅子に腰かけてみる。150円くらいのクレープ状のネギのお好み焼きのようなものに、豆板醤のようなものを付けてつついてみる…美味しいじゃないか!
そして、私たちの宿泊するホテルからほど近い「双連市場」の朝市へ。ここは学問の神様を祀った文昌宮を中心に遊歩道に伸びた青空市場。爽やかな「おはよう!」な気分できょろきょろ! 地元の人たちが朝食の準備用に物色。綺麗に並べられたグァバ、大きな梨は枝ごと、長〜い茄子や大きなゴーヤ…冬瓜は輪切りにして欲しい大きさを切ってくれる。果物や野菜を持って帰れないのは何とも残念! ドライフルーツと活気だけをいただいて帰ることに。
でも陽射しはもう「今日も猛暑日」を知らせてる。ちょっと冷たいものを! そうだ!やっぱりあれ! あれこれ豆や団子やゼリーを選べる「トッピングかき氷」。元気なおばちゃんがタピオカをちょっと多めにサービスしてくれた。

 

 
 
 

台北から東へバスで1時間ほど、山あいの海に面したレトロな街「九份」ここは一度は訪れてみたいと思っていた。すれ違うのもやっとというほどの細い階段、ここがメインストリート。映画の舞台になった看板を入れようと、みんなここで記念撮影を試みるもんだから、なおさら渋滞。しかし清の時代には9戸の家が佇むだけの辺境の地だったそうで、その後金鉱の発掘でゴールドラッシュ! そのあとは衰退…。忘れ去られた町になっていたのだ。近年映画の舞台やアニメ「千と千尋の〜」のイメージに似た町となって、すっかり人気の観光地となったのだ。
それにしても崖っぷちにへばり付くような家々やお店、眺めの良いレストランや茶館は半分オープンテラス、先週の台風の風雨で…ちょっと道が崩れたり、屋根が落ちそうになっていたりして、大丈夫かしらこの町…一抹の不安が…。日が落ちて赤い提灯に灯がともると一層ノスタルジックな街の風情。その提灯の電機の配線もレトロで、一抹の不安が…まあ〜郷愁をそそる光景と、その不安は紙一重かも?
ちょっとタイムスリップしたかのような、黄昏時の九份小旅行。意外に味わい深いものだった。

 

 
 
 

好きな花は何?と聞かれたら奇遇にも「蓮」と答える二人。とっておきの所を知っている! 2005年に来た時も夏だった。きっと今回も蓮の見ごろの頃に違いない!
台北市街地のオアシス「南海学園・植物園」の奥にある蓮池、国立歴史博物館の脇から入れる近道を記憶していた。ちょっぴり早起きして大好きな蓮に会うためにその近道さえ早歩き! 淡いピンクと白い花が、たおやかに大きな丸いカーペットのような葉っぱの間に咲いている。その蓮の葉の中央には、昨夜のうちに降った雨がところどころに残ってそれも素敵! 明日開く蕾はぷっくりと下膨れになってかわいい。開く前の葉っぱは、巻物か珍しい楽器のような独特な形をして揺れている。もちろんあの蓮独特なシャワーヘッドのような青い実をたたえた姿も、すっくと立ってこっちを見ているかのよう。
蓮の写真集でも出すのか?というくらい二人して夢中に撮影。ああ…大きな和紙と水墨画の道具を持ってくれば良かったな〜とちょっと思ったけど…この暑さと湿気。無理無理!そして、しばしぼ〜っと眺めてみたり…。蓮の花はやはり人の心を鎮める癒し効果があるのだろうか…私たちは、それぞれに亡くなった人の思い出を、蓮池のベンチで忍んでいた。特にそんな話はしなかったけど…たぶん。
蓮池にす〜っと風が走って一列に蓮の葉が揺れていく。気持ちがいいほど大きく葉が揺れて、そして何事もなかったかのように花も葉も蕾も凛と立っている。

 

 
 
 

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