■2011年10月の「絵てがみコラム」
 

高山の駅前からバスで1時間半、奥飛騨温泉郷・新穂高温泉からロープウェイ。このあたりまで来ると、空気が益々澄んで、雨にぬれた色づいた木々の葉が一層鮮やか。
ロープウェイを乗り継いで頂上の西穂高口は2156メートル。そ〜いえば、このメンバーで小豆島の寒霞渓にもロープウェイで上ったことがあるね。ロープウェイ好きなのかしら?しかし標高22156メートルは少々息苦しい。展望台に登っても視界ゼロの真っ白な霧。残念〜と肩を落とす私に山の天気は変わりやすいからと山に詳しい先輩の言葉、しばし様子を見ることに。みんなで「ふ〜!」と息を吹きかけて霧を飛ばしちゃおうかあ〜、なんて言ってるうちに、白い靄が切れて日が射し、北アルプスの美しい姿の一部が…。
2泊3日の慌ただしい飛騨路の旅行だったけど、高山で迎えてくれた友の笑顔も最高だったし、美味しいものいっぱい食べて、あれもこれも楽しゅうございました〜。
思い出も熱いうちに、筆が一気に進みました。

 

 
 
 

下呂では旅館での夕食ではなく、温泉街を散策して郷土料理の居酒屋でこの土地ならではの家庭料理的な物を頂くことに。
有名なのが朴葉味噌焼き。朴の木の葉にお味噌を乗せて焼くのだけど、基本お味噌を焼くのね?季節がらマイタケなども添えられていたが、味は濃厚で香ばしく焼いたお味噌でご飯が進みすぎ!(でも、一般家庭での食事で、朴の葉を敷いていちいち焼くことは余りないそうで…)やはりおもてなし料理の一つなんでしょうね。大きな焼きナスにもお味噌。鶏ちゃん焼き(鶏肉・キャベツ・にら・にんにくなどが入った味噌焼き鍋)山菜の煮物など。この地方、少々味は濃いめですね。寒いところの保存食として根付いているお味噌やおつけもの。なるほどね〜地元の味を食するのは旅行の醍醐味ですね。
そして飛騨高山では期待の飛騨牛〜!美しい懐石料理の締めくくりは飛騨牛の食べ比べと松茸ごはん!贅沢です〜〜ぅ。脂の乗った飛騨牛トロと、飛騨牛赤身、(いや〜ん甲乙付けがたし。)それをおろしポン酢と麹味噌で頂く。やっぱり味噌なのね。
町には飛騨牛ハンバーガーや飛騨牛肉まん、飛騨牛の串焼きや飛騨牛せんべいなどユニークな新興勢力の飛騨牛が溢れていた。

 

 
 
 

夜からの雨が少し残っている早朝、名物の朝市に出かけた。赤かぶの漬物、大きく長細い宿儺かぼちゃ、飛騨リンゴ、秋しまささげ、朴葉焼き用の大きな葉っぱや味噌、つきたての栃の実入りの餅など珍しいものが並ぶ。朝ご飯前なのでお腹ぺこぺこ!あれもこれもつまみ食いしたくなる。地元のおばちゃん達が持ち寄った、新鮮で飾りっけのない、地の物の誘惑にそれぞれあれこれ、足を止め買い求めた。早起きした甲斐があるよね?
国内はもとより、海外の旅行先でも朝市は楽しい。小さなテントに板を並べ簡易の台に籠やトレイを置いて小さなお店の完成。おばちゃんに、調理の仕方を聞いたり、名前を聞いたり(海外でもこんな会話が出来るといいんだけど…)その土地に触れ合えるひと時なのだ。
もちろん宿の朝ご飯も、そんな朝市で見かけたいろんな新鮮野菜をふんだんに使った、素朴なごちそうであった。搾りたて新鮮飛騨リンゴジュース甘かった!

 

 
 
 

翌日、下呂から特急で45分ほど北、旅の一番の目的地高山で、この春高山に嫁いだ幸せオーラ漂う友と合流。嬉しい再会となった。
なんども写真やテレビで見たことがある古い街並み、宮川にかかる朱色の中橋、情緒のある木造の建物…観光地ではあるけど、京都や鎌倉とも違う独特な落ち着きのある街。描きたい街角がいっぱい!初めての飛騨高山にまたまた興奮。そして積もる話も一杯!
実はこの参加メンバー、10年前「和楽」という雑誌の創刊記念で募集があった旅の作文に選ばれて、共に豪華なご招待旅行を経験した仲間。それ以来10年全員揃うことはなかなか難しいが、時々いろんな組み合わせで食事をしたり、旅行をしたり、旅行情報を交換したり…10年の間には、お互いいろんなことがあって、嬉しいことも辛いこともいっぱいあって…でも不思議な縁で続いているとっても素敵な女友達なのだ。
もちろんそ〜いうわけで、「和」や「旅」に関しては、みんな心地よいこだわりを持って楽しむことにどん欲。新米高山市民の案内で酒蔵めぐりや素敵な木工・家具ギャラリーを楽しんだり、ご主人に伝統的建造物を案内していただいたり…充実の「ぶらり、まち歩き」。
お天気も時々傘をさす程度。しっとり落ち着いた町に雨もまた、似合っていた。

 

 
 
 

秋たけなわ、2泊3日で下呂・飛騨高山の旅を楽しんできた。10年来の女友達8人!少々お天気が崩れようが、お尻が痛くなるほどの長旅だろうが楽しいに決まっている。
1日目は下呂温泉!日本3大名湯 と呼ばれているが(他、兵庫県の有馬温泉・群馬県の草津温泉)ちょっと地味で静かな温泉町。関西に住んでいた小学生のころに一度来ただけで、全く記憶がなかった。
中心街から車で5〜6分のところに、白川郷から移築されてきた合掌造りの里がある。ここは保存されて公開されているテーマパークのようなところだが秋の山の風景と相まって、夕暮れまでのひと時、実にいい感じ。かりんの木や柿の木が実をたわわに付けて白い秋明菊が秋風に揺れていた。思いっきり秋の空気を吸い込んで、トマトの入った美味しいあんみつもお腹に詰め込んで、町の方に下りて来た。
そしてもう一つのお楽しみ。カエラーの血が騒ぐ!下呂と言えば蛙の鳴き声ゲロゲロゲロ…を連想するというわけで、町のシンボルが蛙君。カエラーの間では「下呂温泉」は聖地?のひとつなのだ。あちこちに存在する蛙のオブジェやモザイクを探しながらの町散策、興奮の一日。その収穫はまた別の機会にご紹介しますね。
しかし、そんな報告だけじゃ〜下呂温泉がかわいそう!さすが、日本3大名湯のひとつ、お湯がなんだかとても良かった。一度入っただけで手足がつるつる!指紋が無くなっちゃったんじゃないかと思って眠れなくなったほど。こんなお湯は初めてでした。
そんなこんなの、ほとんど眠れず仕舞いの旅の一日目。

 

 
 
 

彼岸花の季節が終わり、ふっといい匂い!と振り返れば金木犀。近所の垣根に柘榴の実が下がり、実家へ向かう道端にはコスモスが揺れて……ひと雨ごとに季節が進んで主役の花が変わっている。
そ〜いえば、実家の庭には夏の終わりから結構長く咲いている花がある。「千日紅」(別名・センニチソウ)。苺のようなボンボン型の花でドライフラワーのように少しカサカサしている。濃い赤紫が多いが、家の庭には、その他に白とこんなちょっと上品なピンクが、一抱えもあるほど株を増やして育っていた。
「やだ〜花屋で買わなくっても、こんな可愛いのがあるじゃん!お仏壇用にちょっと頂戴」とピンクのを数枝もらってきた。葉っぱの付け根や葉っぱの先も少し赤みがかっていて少し紅をさしたよう。本や写真を見ただけでは分からない、大人しい花の魅力を発見できるのも秋の夜長のいいところ。今夜はひとつ精密なスケッチでもしましょうか。
さて、来週の週末はちょこっと旅行に出かけます。
絵手紙コラムの更新が遅れますが、紅葉の始まった飛騨高山の美しい景色を描けるものと楽しみにしています。待っててくださいね。

 

 
 
 

先週の週末、コンサートを見に浜松に遠征した。その抜群のタイミングで友人のお父さまと仲間の方たちで開催されている「本が装丁に恋をした」展に立ち寄ることが出来た。
浜松の駅からバスで2〜3停留所、駅前の雑踏を抜けて、大きなビルが無くなり、空が広く見えたとき白いクラシカルな建物が私を迎えてくれた。旧浜松銀行協会の建物で浜松市の指定有形文化財に指定されている木下惠介記念館、その2階のギャラリーでの展覧会だった。駆けつけた時間がギリギリで、閉館時間が迫って、関係者の方々も帰られて、電気も消されて…。でも受付の方に東京から来たとお話したら、恐縮されてギャラリーを拝見することができた。(すみません、ご無理言って。ありがとうございました!)
折金紀男氏は以前、ハガキ程度の大きさの和紙に描いた蛙の絵を小さな小さな豆本に仕立てて下さった。( K.K.W No.527) 手製本は本当に味わい深く、きちっとした仕上がりが実に気持ち良い。そんな手仕事を手にとって拝見できる貴重な展示会だ。絵本作家の方のかわいい創作絵本、和とじ本も興味深い。
ノスタルジックな建物と天井の高い白い壁の空間が、とても似会って秋の夕暮れ時ちょっとほんわかした時間を楽しむことが出来た。
「本が装丁に恋をした」展 〜10月23日(日)まで開催中。
浜松市木下惠介記念館・2階アートギャラリーにて

 

 
 
 

先日の絵画教室のお題は「秋の実り」生徒さんが庭の秋を持参してくれた。茗荷、紫蘇、水引草、柘榴(ざくろ)…生花店には並ばない素朴な題材だ。
特に柘榴は、私自身何度も描いたことがある魅力的で大好きな植物なのだ。赤い硬い実の中に沢山の赤い種子、そんな様子から豊穣や子宝に恵まれる吉木として知られている。ヨーロッパでも新婚さんが、柘榴の実を地面に投げて割り、飛び散った種子の数で授かる子供の数を占ったり、ギザギザの実の先が王冠に似ていることから、栄光や繁栄を象徴する紋章に使われたりとか、世界の縁起物だと思っていた。
しかし肝心の日本に伝わる「鬼子母神伝説」は知らなかった。知っていますか?鬼子母神はインドの仏教伝説に出てくる女神で1000人の子供を産んだけど、他人の子供を取って食う、とんでもない鬼神だった。そんな行いを改めさせようと、釈迦は鬼神が溺愛している末っ子を隠して、親の苦しみや悲しみを解らせ、もうそんなことを2度とするな! と戒めた。子供を食べたくなったら(怖い〜!)代わりに人肉の色や味を連想させる柘榴を与えて改心させた。その後、鬼子母神は子孫繁栄、子育て、子供を守る神様と敬われるようになった。なので日蓮宗の寺庭などの多くには柘榴が植えられているとか。この伝説から、凶事を招くとして庭に植えることを忌み嫌う地域と、改心して子供を守る縁起の良い木として大事にされている地域と、対極の解釈があるらしい。
面白いですね。元は同じ伝説から来ているのに…。いろんな側面を持つ柘榴、やっぱり魅力的な「実」です。

 

 
 
 

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