■2009年3月の「絵てがみコラム」
 

三月最後の日曜日で四十九日を迎える。彼がいなくなって四十九日にもなるんだ。まだ四十九日…と言う気もする。もっとずっとずっと会っていないような昨日の事のような…不思議な感覚だ。
日本仏教の考え方では亡くなった人は三途の川を渡り長い旅をする、なのでお葬式の時の衣装を旅装束という。そういえば棺の足元にわらぞうりも入れられていたっけ。旅の途中を7日を一単位に7回お裁きと教えを受けて最後に閻魔様に生前の行いを裁く審判を言い渡される、それが四十九日目。審判が終わった個人の魂はやっと仏様の世界にたどり着けるという。故人の徳が報われて極楽往生できるように親しいものが後押しするように祈るので追善法要というらしい。
彼は生前からその審判を大丈夫かな〜なんて心配していたが、四十九日法要も無事終えて、ま〜彼のことだから大丈夫だと思うので私はあんまり心配せずに遺影の周りの花の手入れに時間をついやしたりしています。供えていただいた普段買えないような高価で珍しい花を毎日アレンジメントを換えて楽しんでみたり、じっくり描く時の為に写真をとっておいたり、そんな時間はきっと私自身も癒されて笑顔になっているはず。小さな祈りを微笑みにかえて…。
それがいいよね?ね。

 

 
 
 

春は新しい雑誌などの創刊も多く季刊誌も一斉に出揃う。仕事の資料を探すために大型書店に何度も通っていると、顕著に色合いの違うコーナーを発見!そのコーナーだけやたら白っぽいのだ。ライフスタイル・カルチャー・女性誌の中でも手作り、ナチュラル、エコロジー…普段着感覚をキーワードにした本が並ぶコーナーだ。
申し合わせたように表紙は白っぽく文字は小さめ、写真も少なく誌面の白い空間が多いのだ。料理を盛ったお皿はぽってりした年代物でファブリックは北欧テイストでテーブルに並んだ料理は少なめ。雑貨を手作りする作家を特集したり、その人のライフスタイル自身が読者のあこがれなのか、素朴ながらこだわった暮らし振りが垣間見える。 こう言う雑誌には高級ファッションブランドの広告ページは皆無で有機野菜の取り寄せや自然派化粧品の広告、タイアップ記事が盛り込まれている。
同じ日常性をうたっていても節約術や整理整頓、お掃除上手なカリスマ主婦路線の雑誌は誌面にぎっしり写真や説明図が掲載されていて誌面さえ無駄にしないぞー!という気合に溢れていたりする。
なるほどね〜、するとこの白っぽい空間の多い誌面はゆとりとか余分なものはいらないとか、洗いざらしのような暮らし方…とかを白い何もない空間で提案しているのだろうか。
時代や流行をわかりやすく発信している春の本屋さんチェックは意外に大事なお仕事です。

 

 
 
 

毎年恒例確定申告。一年分のレシートや領収書、支払い調書とにらめっこして「ささやかな収入のためにこんなに経費かかっちゃって全然儲かりませんでした〜。すみません!税金還付してください。高額納税者様ありがとうございます。」と毎年税務署を肩身狭く退散するのですが、何故か大きな仕事を成し遂げたような達成感があるから不思議だ。慣れない数字との戦いでかなり疲れる作業だからだろう。
そしてレシートは小さな日記のように、何処へいった何を食べた…と一年の出来事を思い起こさせるし、医療費の領収書などは一層気持ちを曇らせる。ま。でもそれも終えて税務署を出た足で次の仕事の準備。デコレーターの仕事の延長で一年間の歳時にあわせて造花などでリースを作るためのお買い物。季節はずれのハロウィンやクリスマスイメージの小物も集めなくてはいけない。 先輩デコレーターさんに教えてもらったお店の倉庫で物色。さすがに店頭には出ていない。お店の人が「わ〜もうハロウィン?クリスマス?早いですね〜」まったくだ!時は止まってくれないのだ。ダンボール一杯買い物をして、今年の春は今年の春だけのもの…と心に言い聞かせた途端チョッと可愛いコスチュームジュエリーを発見!還付金をあてにして衝動買い!このレシートも来年の春思い出すんだろうな〜今日のこの気分を。

 

 
 
 

通い慣れた築地駅から国立がんセンター中央病院に向う道は胸が一杯になる。
時々入ったお寿司屋さんでランチにぎりを食べて、場外市場を左に見ながら病院へ約一ヶ月ぶりに歩く。冷たい雨が哀しい気持ちに拍車をかけるけど最終の入院費の支払いや看護師さんたちにも一言挨拶がしたかった。
がんセンターの16階、見慣れたレインボーブリッジが霧雨に煙っている。「あー後藤さん!」お世話になった看護師さんたちがみんな声をかけてくれる。先生はあいにく留守だったけど病室で描いた風景に着色した作品をひとつプレゼントさせてもらった。私にできることはこれくらいのこと。御礼を言いに行ったのに涙がこぼれそうで言葉にならなかった。病院に行ったのに彼がいない現実はやはりとても辛かった。
帰り道、うおがし銘茶倶楽部でお菓子付きのお茶を飲んで、気に入って何度か通った中国整体院に寄った。元気なつもりでも一か月分の精神的な疲れもほぐしてもらうべく、いつもの倍のコースを奮発した。「疲れていますね〜。今までで一番硬いですよ〜。仕事、忙しいですか〜?今。不景気、仕事忙しい…いいことね〜。」何も知らないイケメン中国人整体師さんが話し掛ける。「色々あったからね〜〜。」無気力なトドは、ボソッと答えた。15分もサービスしてもらって整体院を出る。まだ雨が降り続いているけど身も心も少し軽くなったような感じだ。こうして私は築地通いに終止符を打った。
明日は晴れるだろうか…。

 

 
 
 
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