■2008年9月の「絵てがみコラム」
 

夜の風が急に秋を運んできたかのような週末。チョッとひと息、久しぶりに行った浅草で買ってきた芋ようかんでも食べよう。
芋栗南京の季節だ。どれも好き。食欲の秋に拍車をかける。毎年目新しいスイ-ツが登場するが、長年変らない伝統の味もやっぱり良い。熱いお茶ともよくあっておいしい。
秋の予定も特にないので古い雑誌を整理して、半端な古着もごッそり捨てて、長年眠りつづけていた日用品もかなり思い切って処分した。チョッと部屋の中の風通しをよくしたくなったのだ。まだ整理しきれていないダンボールや紙袋がゴロゴロしているが、ま、ゆっくり秋の夜長、芋ようかんを食べ終えたら片付けの続きをしましょうか。

 

 
 
 

スーパーのレジに並んでいたら、レジを打つ店員さんと馴染みのお客さんが明日の天気の話をしていた。
「どうかな〜台風通り過ぎるかな〜?お弁当の準備困るのよね〜」
そうか!この週末近所の小学校や中学校で運動会の予定が組まれているのだ。2、3日前に近所の小学校の校庭で行進の練習をしていた。家は子供がいないので、すっかり運動会などの学校行事に縁遠くなってしまって、よく孫のために祖父母が徹夜で場所取りをするとか、父親はみんなビデオ撮影のために新機種で競うとか、差別になるからかけっこにも順位を付けないとか…今時の運動会の噂は聞いているけど本当のところはどうなんだろう。
子供の頃から運動は苦手でその発表会である運動会はすごく憂鬱だった事を覚えているが、一度だけリレーの選手に選ばれたことがあった。運動会のラストを飾る町別リレー、○○町に住む一年生の男女、二年生の男女…六年生まで合計12名の選ばれた児童で町内会を代表して走る。ご近所さんがみんな応援してくれる花形の種目だった。おそらくその学区は6〜7つの町から児童が通っていたのだろう。私は今までの人生史上?このときが運動神経のピークだと確信しているのだが松浜町4年生の女子代表に選ばれて走った。結果は忘れたけどそんなことは後にも先にも一度きりで子供心に栄誉なことで嬉しかったに違いない。今でもはっきり覚えている。
そして忘れられないのがまだ青い酸っぱいみかん。9月の運動会シーズン、初物のみかんをのり巻のお弁当と一緒に食べる。まだ酸っぱくて、なまぬるい。決して美味しくはないんだけど運動会と言えば私にとっては町別リレーと青いみかんだな。さて、週末のお天気は…?

 

 
 
 

都会の夕焼けも捨てたもんじゃない。眩しい西日を避けてブラインドを閉じて30分ほど…静かに静かに西日とは違うオレンジ色がブラインドのわずかな隙間から黄昏時の手前を知らせる。このひとときを見逃してはいけない。ほとんど気付かないまま通り過ぎてしまう時間だけど、淡いパープルとオレンジとのグラデーション、そして夜のグレーがゆっくり
降りてくるような…不思議な色の空なのだ。ビルの林のその間から見える空はまるでオレンジ色の縦ストライプ。でもそれもほんのわずかな時間。くっきりと高さや形を競っていたビル群の窓にもオレンジ色が映りこみ夕焼けのストライプはすぐに消えて夜を迎える。「あ〜夜になっちゃった。」

 

 
 
 

去年の9月の絵てがみコラムを読み返してみた。友達の病気の事を知って落ち込んだ様子を書いていた。今年の秋はそれが一層身近な問題として私を包んでいる。あらためて日常の平凡の幸せや健康のありがたさや家族や夫婦の尊さや人生そのもののことや…一日が何年分もの重みを持って私に語りかけているようだ。
大切なものは何か…すごく漠然としたものだけど先ずは目の前、手のひらに乗っているものをじっと見つめて確かめてそれがどんなものなのかをしっかり考える。今までだったら何も気にせず、ぱっとその辺に置いていたものだったかもしれない。平凡な日常とはそんなものかもしれない。
地味な花も良く見るとその美しさに驚かされることがある。竜胆(りんどう)もチョッと寂しげな紫色の秋の花。群生せずに一本ずつ咲く事から花言葉は「悲しんでいるあなたを愛す」。何度も描いた事があったと思っていたけど、絵てがみコラムでは初めてだったことに気が付いた。

 

 
 
 

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