■2008年2月の「絵てがみコラム」
 

風が柔かくなって確かな春の訪れを感じる今日この頃ですね。ベランダのチューリップの球根も芽を出して、寒さで元気を無くしていた「金のなる木」もすこし元気を吹き返してきているようです。球根が育つのを待ちきれず、黄色いチューリップを買って来て部屋に飾った。チューリップは好きな花の一つで、最近は丈の小さいミニ鉢が流行しているが葉っぱが魅力的だと思うので丈の長いチューリップの方が好きだ。色では、白に黄緑の混ざったちょっと野菜っぽい切れ込みのあるパロット咲きの変種のチューリップが特に好み。この珍種のチューリップを仕入れてくれたお店の人のセンスに敬意を表して見かけたら即買ってしまうことも。赤やピンクの花に比べたら多少華やかさに欠けるけど独特な個性とさわやかさがいいな〜と思うのです。変種は球根からだと育てるのが難しく、ベランダの鉢では栄養不足の為か何度も挑戦しては失敗している。
チューリップといえばオランダ。17世紀のオランダでは珍しい品種の球根が巨額で取引されたチューリップ狂時代というのがあって、一時はヨーロッパ経済が混乱するほどだったとか。本場アムステルダムの花屋さんではいろんな色のチューリップが50本単位くらいで売られている。(確か7年前の価格で50本で15ユーロ〜1800円くらい。)ホテルのロビーなどでは茎の長さを利用して思い切りウェーブさせたおしゃれでシンプルに活けられているのが印象的だった。
小さい頃のお絵かきでも一番最初に描いた花かもしれない、学校の花壇にも必ずあったよね。昔から一番親しんできた春を告げる花チューリップ。これからの進化も楽しみだ。

 

 
 
 

「額縁貧乏なのよね〜」と嘆くと「何それ?」と聞かれる。展覧会などを行うと、紙や絵の具はたいしたことはなく、出費の多くを占めるのは額縁代なのだ。私の中でバブルな時代があったとすれば、わがままサイズに描いた絵に合わせてほとんどオーダーメイドで額縁をあつらえていた頃だ。油絵のようにF何号S何号と差替えがしやすい場合はキャンパスを外して共用の額縁があれば保存しやすいのだが、いろんなボードや和紙にフィーリングで描いてしまった後に既製の額縁に収めるのに苦労するのだ。そして他の絵に差替えしづらく、そのまま多様な寸法の額縁が家の納戸に溢れ、実家の元私の部屋なども額縁収納庫と化していくのだ。それでもやめられない!さすがにフル−オーダーすることは少なくなったが、やはり新しい絵には新しい額縁をコーディネートしたいのだ。
額縁選びが特に好きなのかもしれない。絵の雰囲気に合わせて、インテリアをイメージして少しでも絵が映えるようにすてきなドレスを選んであげたいと思ってしまうのだ。良いものはやはり良いのだが何でもバランスが大事で、見た目にも値段的にも丁度良いものを用意する事を心がけているが、馬子にも衣装で大いにイメージアップできる時もあるし、自分でも気付かなかった意外な表情を見せる時もあって、仕上げの最後の楽しみなのだ。いつもは私の墨のタッチを意識したシンプルな艶消しの黒っぽいものを選ぶ事が多いが、先日珍しくヨーロッパの風景画の注文を受けた。しかも往年の女優キャサリンヘップバーンが主演した映画のノスタルジックなイメージでという難題だ。ずっと以前に自分が旅行して写した写真などを引っ張り出して、その地の空気感を表現したいと挑んだ。そして仕上げの額縁は…。いつも良く行く画材店ではなく、以前からちょっと気になっていた神保町の古書店街にあるクラシカルな額縁店を覗いてみた。店内のストーブの上に飴色のやかんが乗っていて、所狭しと額縁が山積みされている。そんな中から、少し鈍いゴールドの丸みのある額縁を見つけた。本当に古いものではなくアンティーク風なのだが今回の依頼にはピッタリなドレスのように感じた。そしてふと見るとその横に黒い、ずっしりいい感じの額縁が…時々創作意欲の湧く額縁との出会いがある。「あの〜それと、この黒い額縁3個、取り置きしておいてもらえますか〜?」とおもわず口走っていた。
だから額縁貧乏なんだってばー!

 

 
 
 

毎日結構寒い。雪もよく降る冬らしい冬だ。東京はちょっと雪が積もると滑って転んで救急車出動続出、交通機関も途端に麻痺する。
日曜に降った雪が少し残った月曜日に、イラストの入稿と次の打ち合わせの間小石川後楽園の横を通り過ぎた。ふと、入ってみようかと思い立ってユーターン。駆け足で?散策してみることにした。手入れの行き届いた庭。綺麗に雪が残っているところに陽が差してキラキラと美しい。小石川後楽園は江戸時代の初期水戸徳川家の上屋敷として造られ、二代藩主光圀の代に完成した回遊式の円月橋などのある少し中国趣味の庭園だ。園名も舜水の命名で後楽園とは「天下の憂いに先立って憂い、天下の楽しみに遅れて楽しむ」という天下人の心得のような意味があるらしい。すぐ隣りには東京ドームや文京区役所シビックセンターもそびえ立っている。そんな街中にいる事を忘れるほど静かで、こんなに冷たい空気の張りつめた日には都会のオアシスとしても格別な表情を見せているようだ。四季折々の風情をちょこっと楽しむにも良いところでスケッチに訪れたこともある。この日も梅のつぼみが少しほころび、雪の中から福寿草も芽を出していた。藁葺き屋根の小屋の雪も解け急いでいるかのようにポトポトと落ちて、街の雪はあっという間に姿を小さくしていた。
さて、この週末も雪の予報。春はまだかな?


 
 
 

タイミングが悪い、悪すぎる。先週ご馳走になったとっても美味しかった中華料理の事をコラムに書こうと用意していたところに、中国製の冷凍餃子に殺虫剤成分が入っていたというニュース。昨年のダンボール入り肉まんの衝撃もさめないまま、中国の食材への不安や疑問が益々強まった事になる。
勿論今回のニュースも、必ずしも中国側が悪いと決まったわけではなく迅速な調査の結果を待たなくてはならないが、農薬に対する基準や衛生レベルの違いは否めない。中国の国民は野菜を何度も綺麗な水で洗い、中には野菜洗い専用の洗剤で洗った上に一時間水につけおき洗いする人も多いという。その反面野菜を作っている農民たちは農薬の恐ろしさを知らされずほとんど無頓着であるという現実。中国製品におおいに依存している日本、いい関係でいたいのにな〜。大好物の餃子が返品されて山積みになっている映像に胸が痛む。
ところで、私がご馳走になったのは香港に本店をもつ洗練された有名店でのランチだ。一つずつ丁寧に作られた具沢山の点心。くらげの冷製前菜も厚みが違う!目の前でサーブしてくれる北京ダックもひと巻きに使われる量が違う!パリッと甘い!味噌もなんとも美味!もちろん自慢のふかひれのスープも濃厚だけどしつこくない。美味しい〜。
ご馳走様でした〜。

 

 
 
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