■2015年10月の「絵てがみコラム」
 

なかなか行きたくても、縁のない場所ってありますよね? 母のいとこが上京して母と横浜・鎌倉・東京スカイツリーの旅を計画。ツアコンとしては横浜を拠点にすることにして、この際だから、母たちの旅行に便乗して憧れの「横浜HOTEL NEW GRAND」を予約した。横浜山下公園に面したクラシカルホテルで、映画や小説にもよく登場する、横浜の歴史を象徴するホテルと言っても過言ではない。横浜港から吹く風が異国情緒を醸し出し、外国人渡航者に向けたヨーロッパスタイルのホテルだ。関東大震災の復興とともに1927年に産声を上げたという。
タワー館は近代的な客室だが、なんといっても素晴らしいのは本館の大階段と重厚なメインダイニングだ。中華街でお腹いっぱい夕食を楽しんだ私たちは腹ごなしに?メインテーマのホテル内散策に。誰もいない大階段を上ってみる。高い天井、ちょっとオリエンタルな趣もある大きなペンダントライトの温かく、ほのかな灯り…。柱の一本一本、マホガニーの椅子のディテェールひとつずつが重々しく、重ねた歴史に黒光りしている。本館の設計は銀座和光などを設計した渡辺仁氏によるもので、クラシックホテルの代表例と言われている。マッカーサー元帥やチャップリン、ベーブルースなど各界著名人を多く迎え、この椅子にも座り、この窓から港の灯りを見たかもしれない…。氷川丸が真正面に見え、夜のとばりの中に港町らしく汽笛も聞こえる…一瞬、映画や小説の世界に入り込んでしまいそう…いいや、自分でも小説の一編でも書けそうな気になってくる。
中庭を散策していると老夫婦と娘さんと思しき3人、ご夫婦の結婚記念日で62年前にここで結婚式を挙げたそうだ。ホテルニューグランドの歴史そのもののエピソード。かなりご高齢のお父様が気をきかせて、私たち3人の写真を…と震える手でシャッターを押してくれた。ぶれぶれの写真を見るたびにこの日を思い出しそうだ。

 

 
 
 

秋だからね〜こんな日が1日くらいなくっちゃ! ひとり、北鎌倉へのんびりと。
鎌倉彫の知人の作品展を拝見した後、線路の反対側の円覚寺に。穏やかな秋の日、小学生がたくさん課外授業かな? いろいろ調べながら見学している。高齢者の写生グループがあちこちで、携帯椅子を広げて写生に勤しんでいる。見事な山門、妙香池のもみじはまだ青い。私もそんなグループのはずれで、小さなスケッチブックに筆ペンで速攻スケッチ。どうも筆ペンって苦手なのよね〜。やっぱりいつものように鉛筆スケッチに帰ってから着色、墨入れ。わずかな時間でも必要な時間…って感じ。
奥まったところに、いい感じの「如意庵」という名の甘味処。迷わず石段を上がる。おっと!石段のわきにお茶の花が…。お茶席に活ける花→「茶花」ではなく、お茶の木の花。とてもかわいい、小さな白い花でうつむき加減に下を向いて咲く。大きな実もつけている。椿に似ているな〜と思っていたら、やはり同じツバキ科の花だという。常緑樹特有の青々とした艶のある葉、固い黒い種も似ている。期待の紅葉にはまだまだだったけど他にも秋明菊や野生のリンドウなど、かれんな花が秋を伝えてくれた。
さて、ロゴマークをデザインした縁で今年もフライヤーのデザインを依頼された、流山・蔵灯環での「くらとわマルシェ」。この秋3周年で11月1日に開催です。私は別に何も参加しませんが、お近くの方は是非、素朴で美味しいものが並びます。詳しくはWhat's Newをご覧ください。

 

 
 
 

「モダン絵てがみ」の本を見ながら描いてみたんですけど〜難しくって上手く描けません…受講生さんの声。この季節、一番描いてみたい花ですよね。花はピンクの濃淡で蕾もかわいく、葉っぱはあっさりしてるので簡単に描けそうな気がするのですが、軽やかさを出すのが意外に難しいかもしれません。花のわりに茎は細く、花は風に揺れているようにいろんな角度を向いていないと軽やかさが出ないかも?
本当は一度しっかりスケッチをするのが大事! 花弁は大体基本8枚。花びらが反り返っている感じや横から見た感じなど、特徴をしっかり捉えたいですね。蕾の形もかわいく、特徴があります。まだ固い蕾は緑色で、大きく膨らんだ蕾は少し赤みを帯びて、茎の曲線は滑らかに…そんなバリエーションを描けるようになるとコスモスらしさバッチリ! ぜひ挑戦してみましょう〜!
急に朝晩寒くなってきましたね。風邪などひかないように…秋の夜長、ちょっと暖かくして、秋の花を一輪ニ輪練習してみましょう。

 

 
 
 

またひとつ思い出が詰まった空間が姿を変える。古くは日劇、田園コロシアム、大阪フェスティバルホール、そして渋谷公会堂。公園通りを上り詰めた左側、区役所に隣接して渋公。私が通っていた桑沢デザイン研究所は、その右手3分の所にあり、学校帰りや授業の合間にコンサートはもとより、お金のない学生が、音楽に親しむためには無料で見れる、音楽番組の収録や公開放送に足げく通ったものだ。おそらく100回や200回じゃあ済まない程。
原宿、表参道、オリンピック競技場、NHK、渋谷公園通り、渋公は私にとって「遊び」「学び」のテリトリー。70年代後半〜80年、バイトしてウォークマンは絶対欲しかったし、男子はテクノカット。センター街はインベーダーゲームの電子音に溢れ、デザイナーブランドのビニールBAGを持つことが何よりお洒落で、non-noに取材されたこともあったな。西武百貨店やPARCOのCMがめちゃくちゃ尖がっていた。恐ろしいほど昔のことだけど、そんなキラキラした時代のことは鮮明に覚えている。刺激的なことは、すべてこの辺りにあった。進路を桑沢にしたのも近くに渋公があったから…といっても過言ではない。都心から離れた武蔵美も多摩美も目ではなかったのだ。
そんな渋公が先週51年の歴史に幕を下ろし、渋谷大型再開発の一環で取り壊される。前の東京オリンピックで重量挙げの会場となった渋公だが、耐震構造的にも生まれ変わらなくてはならなくなったのだろう。しっかり見納め出来たけど、公園通りを上り詰めても、もうあの渋公に会えないのかと思うと…ちょっと泣きそうだ。
新しい渋公は2019年の前半の完成を目指すという。

 

 
 
 

早くも10月、低気圧に追い立てられるように、ずっと先だったと思っていたスケジュールがどんどん迫って、消化されていく…もっと時間があったはずなのに…って毎度おなじみの年の終盤です。
私の絵の講座を体験してくださった方には、好奇心いっぱいに「芸術の秋」のスタートを切ってほしいですし、半年1年…と続けてくださっている方には、「どんどん楽しくなってきた」と思ってほしいですし、もっと長く続けている方には「生活の一部のような、素敵な趣味」に育っていてほしいですし…。《教える》なんて、大それたことを始めちゃった自分にとっては、しっかりしなくちゃ!と自分のお尻をたたく秋でございます。
さて先日MilanoのSaayaちゃんから久々のメールが。半年の会期のミラノ万博も残すところ1月を切って、今月末で終了。私が訪れたのは6月の末だったので、すでに3か月も前のことに。日本館は相変わらず人気で、3時間待ちは当たり前、先日5時間半待ちの新記録が…という近況を知らせるメールでした。もう一月ほどで、日本に帰っているなんて変な気分です。…と、充実したMilano暮らしが若い彼女にとって、貴重な体験になっていることでしょう。
この時期になると、来年の計画を色々具体化しなくてはいけないのですが今年は個展をやらない年でしたので、来年はどうする…? 講座のスケジュールと色々…もう5月6月くらいの予定を立てなくてはいけない…。でもまだ何も決まっていません! ちょっと焦ってきた! 焦っては来ているのだけど体は動かない…でへへ!^^; どら焼き食べながら、来年のカレンダーとにらめっこ…そんな「神無月」。

 

 
 
 

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