■2010年10月の「絵てがみコラム」
 

読書家ではないし、昨年の引っ越しの時に大量に書籍も処分して来たので、読書の秋と言っても自慢できる「本」など無いのだが、先日神田神保町に用事があって久しぶりに古書店街を歩いてみた。折しも秋の古本まつりが始まっていて、初日は好天に恵まれて多くの書籍ファンで賑わっていた。
いつもほぼ歩くコースは決まっていて、すずらん通りの「文房堂画材店」で文具雑貨を見てギャラリーを覗く。額縁屋さんの「清泉堂」の特価品を物色して、建築物の写真集や骨董や盆栽の写真集、意外に絵を描く時に参考になる江戸の風物詩なんていう豆本とかを専門店で衝動買いする。古書センターの「薫風花乃堂」で生物専門書の隙間に並んでいるカエルグッズを鑑賞して、チェコの絵本などをパラパラと立ち読み(読めないので見るだけ)して、音楽雑誌やコンサートパンフレットなどを専門に扱う店を覗いて、自分の持っているものが買った時の10倍くらいの値段が付いていることを確認して、ニンマリしながら出てくる。そして最後には靖国通り沿いの書店街には珍しいアジアン雑貨の「季節風」に立ち寄って帰る。
実はこの店には私のポストカードを置いていただいていて、素敵なオーナー親娘自らインドやタイなどに赴いて洒落た雑貨を買いつけて販売されている大好きなお店。店内の雰囲気に合うのか、私のポストカードのリピーターもいらっしゃるとかで、季節の変わり目に商品の差し替えに立ち寄らせてもらうのだ。
あれ?せっかく古書店街に行ったのに肝心の書籍は?そ〜なの、なかなかフィーリングの合うものを嗅ぎ分けられないのですが…雰囲気だけでもちょっと楽しい「古本まつり」、週末は台風接近で書店めぐりには生憎のお天気になりそうですが、お目当ての一冊に巡り合えるといいですよね。一度訪れてみては?

 

 
 
 

ペーパーレスの時代と言われても、仕事柄、紙に接する機会も多く、年間消費量も一般の人と比べたらかなり多いだろう。水彩紙や画仙紙、大きな専門店で手漉き和紙を選ぶことも多い。
先日訪れたソウルでも「韓紙」と呼ばれる和紙に似た風合いの紙を数枚購入。インサドンにはそんな「韓紙」で作られた人形や照明器具など伝統韓紙工芸品が多く販売されていた。絵や字を描く紙と言うより、工芸品用に多く使われているのだろうか?製紙技術は中国から韓国を経由して千数百年前に日本に伝わったといわれている。風合いが似ているのも当然かもしれないが韓紙と和紙の違いは紙を漉く時に韓紙は一方方向、和紙は前後左右すのこをゆすって漉かれていたという研究データがあるらしい。
紙と言えば、初めての韓国旅行で一番驚いたのがトイレットペーパーを流せないトイレが多いということ。知らなかったな〜中国やインドもそうだったかな〜?排水力が弱く、紙を流すと詰まってしまうことが多いのだそうで使用済みのトイレットペーパーを便器の横のゴミ箱に捨てるのだ。空港や新しいホテルなど以外は流さないのが常識。少々戸惑う現実だった。そ〜いえば、アジアからの観光客が多い秋葉原などの店舗のトイレに「紙はトイレに流せます」と中国語やハングルで表記されていると聞いたことがある!そ~いうことだったのね!紙事情いろいろ。何事も経験ですね〜。

 

 
 
 

マダムKIMさんの現地のお友達にご招待いただいたのは、韓国伝統舞踊を見ながらモダンにアレンジされた宮廷料理を食する…という素敵なディナー。そもそもトウガラシ系の激辛が苦手な私は、日常キムチを食べる習慣もなく韓国料理は特に興味のあるものではなかった。KIMさんに「韓国料理のイメージが変わるわよ」と言われて旅立った今回の旅行。確かに野菜中心でヘルシーなうえに調理された料理の中に混ぜ合わされた、食材の種類たるやすごい数だろうと思われる。一体これは何?と思う謎の食材続出。味もしかりです。もっと店中ぷんぷんキムチ臭いに違いないと思っていたけど、“繊細で手の込んだ謎の香ばしい香り“にイメージは変わっていた。
お粥もそうだがピビンバもパッピンス(かき氷)もいろんな具材を思いっきり混ぜ合わせるのが韓国の味、一言でいえば“混”ですね〜、そんなに全部混ぜちゃったら、全部同じ味になっちゃう〜!と、私にはまだ少々抵抗があるんだけど…。ちらし寿司のようにマグロの部分、貝柱の部分、イクラの部分と違う味を楽しみたいと思ってしまうのが日本人。それは限りなく“生”の素材そのものの味で勝負する日本食との大きな違いかも。もちろん全部混ぜ合わさっても、最後まで飽きさせない隠し味だらけの韓国料理の奥深さも特筆すべきものがある。
ちょっと垣間見ただけの初韓国だったけど「食」に関しても、まだ興味の入口…といった感じ。寒くなったらまた別の魅力的な「食」があるわよん!と道連れ3人の弁。早くも次の訪韓をイメージしているに違いない。

追記
今回私の新発見の食材、トラジ。焼肉屋さんの名前みたいだが桔梗の根っこ。お浸しやごま和え、ビビンパにも入っていた。沈痛、解熱効果のある生薬としても韓国の食卓にはよく登場するらしい。ちょっと苦味のある上品な味わい。
マンドゥと呼ばれる大きな丸型の水餃子、マダムKIMさんお薦めの北村(プックチョン)にあるお店は長蛇の列!でも待った甲斐ありました!つるん〜!と軽い美味しさは、中に野菜や肉と一緒にお豆腐が入っているそう。
韓国では注文しなくても付け合わせのキムチやおかずが出てきてお代りもできる。「でも、キムチの盛りが少ないわ」…と常連グルメたち。韓国もこの夏の異常気象でキムチの材料になる白菜が高騰!深刻な事態らしい。残したら申し訳ない…と必死で完食!汗!汗!トウガラシ修行がまだまだ足りない私であります。

 

 
 
 

お料理の専門家と一緒の旅は「食」に関するボルテージがグンと上がります。どこの国へ行っても、生活感溢れる地元の市場を見物するのはとても楽しいけどせいぜい滞在中の果物を調達するか、お店のおばちゃんに疎とまれながら、写真を撮りまくるくらいの楽しみ方だが、本格的な買い物モードの人と一緒だと俄然「市場リアリティ」が増すのです。
ソウルの東大門よりもっと東にある「京東市場・キョンドンシジャン」は珍しい漢方薬などの生薬の市場「薬令市場・ヤンニャンシジャン」も併設した広大な市場。わくわく興味津々です。山積みされた高麗人参はもとより、ど―見ても雑草にしか見えない謎の茎や、根や実や、(良く考えると幼い頃の“ままごと”の食材と変わらないような…おいおい!)見事に万歳したままミイラになっている蛙君や(生の蛙も苦手だが干し蛙も駄目だ~!)蚕のサナギは茹でられ、乾燥タラは扇形にぶら下げられている。山椒やごま、おじゃこだけの専門店など韓国料理の隠し味の「素」が威勢よく売られています。韓国料理が専門分野のひとつでもあるグルメTさんは、豆がごろごろ入った味噌の塊やトウモロコシ茶、ごま油は専門のごま絞り屋さんで、搾りたてを2本(う〜〜んさすが専門家じゃ!)もちろんキムチ用のトウガラシも購入。桑の葉茶などはまるで公園の落葉掃除でもしたの?と思うほど大きなビニール袋に一抱え。爆笑しちゃう量でした。
彼女のスーツケースはほとんど、食材お持ち帰りでパンパンになったことはいうまでもありません。私も便乗して買い求めた、五味子(オミジャ・甘、辛、酸、苦、塩の5つの味を持つ赤い実)のお茶に松の実を浮かせて、干し柿をつまみながら旅の写真を整理したりして余韻に浸っております。
これも旅の楽しみの一つです。

 

 
 
 

1日目の午後はアメ横のような南大門(ナンデムン)市場でブランド物のコピーの多さに感心し、お店のお兄さんの「うちはにせもの!にせものだけ!にせものしかない!」の正直な客寄せ?に爆笑しながらスルー。料理家グルメTさんご所望の韓流食器などを物色。夕飯の後に訪れた東大門(トンデムン)市場の衣料問屋街、マダムKIMさん常連の革製品専門店で私は緑の革のコートを破格で購入!それが夜中の12時!これが噂の眠らないショッピングゾーン!活気あふれる韓国パワーに圧倒されます。ファッションのサイズやセンスは、ほとんど日本と変わらず、実際東京のオシャレなブティックで買い求めたものでも韓国製の物は多く、流行もほぼ同時進行。それは台湾や香港よりかなり身近な感覚で、さすがお隣の国です。
クラクラするほどの街の喧騒を体験した翌日は、ガラッと変わって李朝時代の王宮の離れ、世界遺産にも登録されている「昌徳宮(チャンドックン)」を見学。1405年に建てられた離宮だが、文禄慶長の役で焼失、1615年に再建、起伏に富む地形に造営された宮殿は李氏朝鮮時代の生活様式や趣を残して“絵になる一角”満載である。特に昌徳宮の奥の秘苑は広大な庭園になっており、芙蓉池の周りでは「宮廷料理人・チャングムの誓い」の撮影も行われ、通称「チャングムの池」と呼ばれているそうだ。時代劇ドラマなどの撮影によくつかわれる昌徳宮、本当に伝統衣装に身を包んだチャングムが駆けだして来そうだ。

 

 
 
 

35回目の海外旅行にして初の韓国!ソウル3泊4日の旅行を楽しんできました。絵画教室の生徒さんでもあり要人の通訳もこなすオシャレなマダムKIMさん、料理研究家で韓国料理の本も出されているグルメTさん、Tさんのお友達の韓国エンターティメントの通訳や翻訳をされているJさん。そんな最強メンバーと行く韓国、即決で仲間入りです。
「恵津さんが好きそうな町、仁寺洞(インサドン)に宿を取りましょう!」嬉しい配慮に感激です。インサドンは伝統と現代が共存する楽しい町、私もずっと以前から雑誌の特集記事を切り抜いて、伝統家屋を少し改装した小さな茶館やギャラリー、骨董や雑貨を見て歩く日を楽しみにしていたのです。
深夜にインサドンギル(通り)から少し脇に入ったホテルのオンドル部屋にチェックイン。オンドルとは韓国伝統の床暖房。ベットではなく、お布団を敷くタイプのお部屋です。(よく、韓流ドラマで見るでしょ?)修学旅行気分で盛り上がります。
朝、一足先にソウル入りしていたKIMさんと合流、美味しい朝粥からスタートです。4人で牡蠣やアワビの入ったお粥、サムゲタン風の鶏に高麗人参入りや松茸の入ったお粥、違う種類を注文してシェアします。パッチャンと呼ばれる付け合わせのおかずも一杯!さっそくグルメ旅行の予感です!(韓国の食については次週、たっぷり)
おいしい朝ご飯の後は、いよいよインサドン散策。町の入り口で大きな筆のモニュメントと蛙の石像に出迎えてもらい、開店したばかりの小さなお店を覗きます。今回一番の目的だったイタチの毛の筆を買い求め、手漉き和紙のような素朴な風合いの「韓紙」を数枚購入。伝統工芸品を扱う店が多いこのエリアならではの品揃えです。若いアーティストの作るアクセサリーなどを見て回るのも楽しく、ちょっと鎌倉の小町通り風の賑わい。KIMさんお薦めの胡桃餡のおはぎのようなお菓子を買い食いしたりしながら、露天の骨董品を物色、蛙の小物も値切ってGET。言葉が堪能なメンバーで、世界中「ディスカウント、プリーズ」で通していた私の出番はありません。ホテルに荷物を置いて午後の部も元気はつらつです!

 

 
 
 

目の病と向き合っている人がいる。私も中学生の頃から視力が悪く、寄る年波も加わって眼鏡やらコンタクトやらで不自由は絶えないけれど、きっとそんなレベルとは比較にならない程の不安と向き合っているに違いない。
心配させまいと周りには隠しているけれど時々弱気が顔をのぞかせる。解ってほしい、気付いてほしいと小さな小さな声で叫んでいるように感じる。手を差し伸べることさえできないけれど、私の手なんかじゃ何の役にも立たないけれど、闇の中の不安から光を見つけてほしい。才能にあふれた人だから、護られていると信じたい。闇は浅く、ささやかな憂鬱だと祈りたい。
ひと雨ごとに、秋が深まり、しみじみと自分の不安や悩みとも向き合う時間が持ててしまう今日この頃。大人だから仕方ないね。いろいろあるねー。

この週末、ちょっと旅行に出かけます。次回の絵てがみコラムで楽しい報告が出来る予定です。どうぞお楽しみに。

 

 
 
 

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