■2009年11月の「絵てがみコラム」
 

太るとわかっていても季節限定の甘いものをなかなか我慢することは難しい。先日訪れた京都でも4月の末に引き続き太極殿「栖園」の琥珀流しをいただく楽しみをスケジュールに組み入れた。やわらかい寒天の甘いおやつだ。4月には桜と小豆があしらわれていたがそれは毎月変わる。9月に訪れた友人は「葡萄だった〜美味しかったよ〜」さて、11月は何かな〜と楽しみに。ぷるぷるの寒天の間に滑り込むように熟した柿が盛られ、てっぺんには少し固めの柿が小さく刻まれトッピング。秋の晴れた朝という感じで目にも鮮やか。もちろんじゅるじゅると、独特なのど越しがたまらない。
そして今日銀座のとらやでこれまた季節限定の「栗あんみつ」を食する機会が…。ランチよりかなりお高いそのお値段。「久しぶりの銀座通りだし来年トラ年だし…ま〜いいか〜」と訳のわからない納得?をして入店。国産の栗で作った栗餡と栗水羊羹、そしてもちろん大きな栗がコロン!と、乳白色の求肥も加わってやわらかいベージュトーンの上品なビジュアル。心の中で「季節限定。旬の甘味東西対決!」と叫びながらゆっくり味わった。
う〜〜ん。甲乙つけがたし!どっちも美味です〜。

 

 
 
 

翌朝、宿の近くの南禅寺までお散歩。南禅寺は何度も来たことあるよねと友達と話しながらちょっと脇道にそれてみることにした。
本堂のガラスに映る真っ赤な紅葉にいざなわれて「天授庵」という門をくぐってみた。栞によると南禅寺の開山塔。本堂前庭の枯山水と書院南庭の回遊式の庭が公開されている。正門から本堂に至る幾何学的な石畳に導かれて真っ赤に色づいた紅葉を真正面に見ながら板の廊下に腰かけてみた。光明院の「波心の庭」とは対照的な直線が印象的な気持ちの良い庭だ。
あ。ここは夫とも来たことがある…。真夏の暑い暑い日でやっぱりこの廊下に座って庭を眺めた。蝉がみ〜んみ〜ん鳴いて、誰もが昼寝をしているようなそんな時間だったような気がする。静かに座っているとそこだけ涼しい風が吹いたような…京都らしいいいところだね。と話していたのに名前など忘れていた。ちょっと泣きそうになった。
今回の京都旅行では他にも普段公開されていない「退耕庵」や東福寺の「方丈庭園」など素敵な庭で心を休める良い時間を過ごすことができた。何度来てもいつ来てもいいね。京都。

 

 
 
 

京都の紅葉を楽しんできた。今回は偶然にもとても素敵な庭に遭遇した。
東福寺の紅葉はあまりにも有名だがまだ一度も訪れたことがなく蹴上の宿から少し早起きして団体の観光客が訪れる前にと駅からの道を急いだ。訪れた11月9日は気持ちの良い秋晴れでまだ晩秋の冷たい風の吹く前、「紅葉は残念ながら3分程度よ。」と宿の方にも教えられていたが庭を掃く音が響くさわやかな朝の空気に十分秋の気配を楽しむことができた。
地元の方が臥雲橋で写真を撮る私と友人に、「もちろん、この東福寺も立派だがこの先の「光明院」の庭も素晴らしいよ。」と教えてくれた。光明院は東福寺の塔頭。そういえば聞いたことがある、昭和の名作庭家・重森三玲の素晴らしい枯山水庭園のことを。そこは小さな門が数段の石段の先に開かれていて入口には「多くの入山を好みません。庭の自尊心を傷つけます。是非というかただけ、どうでもよいと思われる方はお断りしたい」と書かれていた。庭の自尊心…是非見たいという気持ちが湧きあがってきた。ダイナミックに波打つような五月やつつじの植え込みも苔もまだ青々と白砂に映えて美しい!見る角度によっていろんな表情を見せる三尊石組から後光が差したように放射状に配置された立石。本堂にしばらく座って「波心の庭」と命名されたその空間と向き合ってみた。
庭の自尊心…それを簡単に理解するのは難しいけど、ほんの少しはわかったような気がする。

 

 
 
 

MADAMADAMのメンバーでもあり、個展やお教室でも大変人気のある手芸作家の大西淳子さんに特別な鞄を作ってもらった。彼女の作品は着物の古布やヨーロッパのアンティークなゴブラン織り、また自らデザイン監修して発売されているテキスタイルを独特な組み合わせでコーディネートしてビーズなどをあしらった作品作りに定評がありファンも多い。
そんな彼女にわがままを言って亡くなった主人愛用のネクタイを数本送り、私が好きそうな雰囲気の鞄に仕立ててほしいと依頼していたのだ。何度かMADAMADAMの食事会などでも主人と面識があった淳子さんは、作品展などが続き忙しい中、快く引き受けてくださりそれはもう〜〜素晴らしい「特別な鞄」を作ってくださった。
亡くなった主人のネクタイ…といっても遺品的なものにはしたくなかった。全部私の好みで選んだものばかりでデパートや免税店で買ったブランド物ではなく仕事絡みでフランスやイタリア、スペインなどを訪れていた頃街の小さな洋品店で見つけてお土産にしたものやバルセロナの道端の露天商から2本1500円程度で買った物や、100パーセントシルクなんて眉唾だと思ったけど案外いつまでもシャキッとしてて、柄もユニークで私も彼も大のお気に入りだったナイフとフォークの柄のネクタイなど。私にとってもいい感じの旅の思い出が重なっていて捨てたくないな〜と感じていたのだ。それが生き生きとコラージュされ素敵なバッグになって私のもとに届けられた。彼女お得意のビーズもあしらわれ、丁寧な丁寧なつくりで彼女の温かい気持ちが伝わってくるものだった。
みんなに見せびらかしたいけど勿体なくってまだ持ち歩いていない。時々クローゼットから取り出しては眺めている。世界で一つの特別な鞄。

次週は管理人さん旅行中のため一週お休みします。

 

 
 
 

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