■2005年8月の「絵てがみコラム」
 

台風一過。たっぷり含んだ地面の水分が一気に蒸発して蒸し風呂の中にいるような一日、皆様ご無事でしたか?
台風で思い出すのは、もうだいぶ前のことになるがサイパンで大型台風直撃に遭遇!したことだ。2泊3日の真中の一日を台風見物オンリーで過ごした。海に面した眺めの良い部屋はまぎれもない本場の台風最前線だ。その凄さったらもう!
ホテルは慣れたもので、「まもなく暴風圏に入りますから」とバルコニーの椅子やテーブルをそそくさと部屋に取り込み、窓ガラスの縁をぎっちりテーピングした。何故かホテルの従業員がプールサイドのチェアーをプールの中に沈めている…。
後で聞いた話だがバンガロータイプの部屋は窓を外からばってんに板を打ち付けられて、凄まじい台風防御スタイルだったらしい。
予告どおりの時間に雨も風も強くなって、やしの木がびゅんびゅんかわいそうなくらい弓なりに揺れていた。
南の島のホテルは廊下さえ半分屋外、風が強くなってきた頃には、部屋のドアさえ開けることが困難になっていた。
テレビでも見るか…と思っても、停電。ルームサービスは拒否。
エレベーターも止まっているので従業員用の階段でひとつだけ営業しているレストランに食事に行くのも一苦労。
台風を見物するしかない。打ち寄せる波の音と風の音の大協奏曲!
風によって雨の大群が方向をあちこちに変えて、窓にぶち当たる。
やしの木の葉のこすれ合う音、海を越えてやってきた風がピーーーッという凄い音を携えて、初めての障害物にぶち当たる。
海も一晩中、ゴーーーッザバーーーン!と荒れ狂っていた…。
翌日、疲れ果てたやしの木が半分くらいの葉を残して、ぜぃぜぃと立っていた。プールにはたくさんの木の枝や葉と一緒にビーチチェアーが静かに浮いていた。部屋のバルコニーは排水が追いつかず、小さなプールになっていた。
本場の台風見物ツアー、堪能しました。

 

 
 
 

お盆に実家に帰ったら、庭のいちじくの木がもう、実を付けていた。
いちじくとは一日一果ずつ実が熟していくから「一熟」と名がついたとも言われるほど、順々に食べごろを迎える古くから愛されている果物だ。
漢字で書くと無花果と書くので、本当に花が咲かないのに実を付ける不思議な植物だと思っていたら、そういうわけではなく、あの実の中の無数の赤い粒々が花と言うかつぼみと言うか……らしいと、最近知った。(プチうんちく!)
このいちじくが赤紫になってくると、夏も終わりだな〜と思う。母に頼まれておそらく昨日熟した、一番木の上のほうにある実を三脚に乗ってもぎ取る、鳥のえさなんかにやるものか!…と。でも手が滑って、べちゃっと地面に落としてしまった。勿体無い!
今年初物初物!すぐに洗ってじゅるじゅる食べた。熟してるおいしい!(未熟な実を食べると、胃を傷めるらしいからご注意。)今日熟したもうひとつの実にとんぼが停まった。ほらね。もう夏も終わり……。

いちじくはそのまま食べても、もちろんおいしいけれど、生ハムメロンならぬ生ハムいちじくも私大好物。丸ごと赤ワインとお砂糖、レモンで甘く煮てバニラアイスを添えるとかなりお洒落なデザートにも。

 

 
 
 

忠烈祠(ちゅうれつし)は国民党政府のために戦死した将兵などの霊を祀った廟で、美しい色彩の中国宮殿式の建物が見ごたえ満点だ。
廟は軍の管理下に置かれ一時間に一度正門の衛兵の交替式が見られる。台湾は徴兵制度があり18歳になったら1〜2年の入隊が義務付けられている。中でも忠烈祠の衛兵は背が高く、スタイル抜群家柄もよく、イケメン揃いだと評判らしい。確かに一糸乱れぬその動きには思わず、カッコいいー!とシャッターを押す手にも力が入る。
1時間のうち門を守る40分は瞬きすることさえ我慢を強いられるらしい。
汗も介添えにつく一年先輩の白いハンカチでぬぐってもらう。その、1年先輩も実にさわやか。シャツをだら〜と出して、ズボンもお尻の半分くらいずり下げている、日本の若者のスタイルを見慣れているせいか、古い映画に出てくる書生さん風で新鮮だ。そしてさらに、本日の任務を終えて片づけをしながら運動に向かう、ランニングシャツにショートパンツスタイルの兵士。
帽子ベルトの日焼けのあともくっきりと、これまた、さわやか!
「キャ〜彼のほうがいい!」「え〜私こっち!」と観光客の若い女性達が記念撮影をせがんでいた。(わたしは、ちょっと……言えなかった……)
韓流ブームならぬ華流ブーム? 明日の明星(スター)が潜んでいる?
平和なのかも……と苦笑いのひと時。

絵に添えた漢文風の文章はまったくのオリジナルで正しいものではありません。あしからず。

 

 
 
 

台北市街のオアシスと言われる植物園を散策した。
イメージどおりの蓮池があって淡いピンクの花が咲いていた。遠足の幼稚園児のお弁当箱を覗き込むように、蓮のつぼみがゆれていた。この日も33度を超えて晴天。
蓮池を半周したとき、まるで私を待っていたような、蛙の形をした公衆電話スタンドが?!もう!可愛いったりゃありゃしない!
ひとしきり記念撮影をしていたら、もっと本格的なシャッター音が…蓮池をバックに結婚記念写真を撮影している白い衣装のカップルは他のアジアの国でも見かけたが、結婚式をまじかに控えたカップルが撮影隊を引き連れて観光名所やロケーションの美しいところで衣装を5枚も6枚も着替えて撮影して、女優の写真集ばりのアルバムを作るのが恒例らしい。(ただし、かなり修正して大変身するらしいが…)
写真好きの日本人が結婚写真にはこれほどの情熱を傾けないのは何故か?不思議に思えたり…。
何処の国も主役は花嫁さん。炎天下白い三つ揃えのスーツ姿の新郎は玉のような汗をふきふき、引きつった笑顔で頑張っていた。辛抱強さを試されているようで、ちょっと気の毒…。

隣接した国立歴史博物館の茶館で誰も居なくなった蓮池を見下ろしながら、ゆっくり、東方美人という烏龍茶をいただいた。
遠くに蝉が鳴いている。蛙はじっとしている。真夏の台北の昼下がり…。

 

 
 
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