■2012年6月の「絵てがみコラム」
 

梅雨の晴れ間、かねてからお仕事でお世話になっているN 氏に素敵な懐石料理をご馳走になった。上野不忍池のほとり、明治の文豪森鴎外が「舞姫」を執筆した鴎外荘での趣きのある夕食だった。土蔵作りの書斎風の部屋でいただく初夏の味は目にも涼やかで、イタリアのお土産話など大いに話が弾んだ。そんな折り、おかみさんの粋な計らいで、幸運にも他のお座敷に呼ばれたきれいどころをチラリとご紹介いただいた。
「京の舞妓はん、浅草の振袖さん」と呼ばれる、お座敷でお酒のお世話をしたり舞踊を披露したり、そしてもちろん写真のリクエストにお答えしたりそばで拝見するだけで場が華やぐ存在である。「夏の一重のお着物なんです〜」と可愛い桃色の華やかな振袖に身を包み、所作も上品である。京都の芸妓さんほど敷居は高くなく、振袖学院で学んで株式会社に所属…というシステムらしいが、なかなか、日本人なのに、匂い立つような、まるで日本人形を思わせる若い娘さんに接する機会がないので、大変感動した。
「どうして、振袖さんになろうと思ったの?」「あこがれだったんです〜このような姿やお客様の前で日本舞踊をご披露することが…」
振袖さんをやれるのは18歳から25歳までだそうで、AKB48にあこがれるのと似ているのかもしれないが、鮮明なあこがれを持つことは素敵だ。
そしてそれを、実行できている姿は堂々として凛としてとても素敵だ。

 

 
 
 

先日の台風の強い風雨で、母の家庭菜園がめちゃくちゃになってしまったらしい。腰が痛いひざが痛いと言いながらも楽しみに作っているのに、なんだか悲しくなってしまう。趣味の小さな菜園でさえ、やりきれない気持ちになるんだから、収穫前の農家の方々の気持ちは察するに余りある。土砂崩れ、水浸し、床上浸水…前が見えない程の雨を見ながら、この雨水、この雨の勢いを電力不足の方に、何とか持って行けないものなのだろうか…。誰か賢い人!風・太陽・雨の自然の力だけで不自由なく暮らしていけるようなシステムを考えてくれ〜!
それにしても、ちょっと良いことも。余りに強い風雨で網戸が若干きれいになったような…。室内に入れっぱなしだった植物もベランダでたっぷり雨水を吸って、生き生きしてきたような…。
雨もほどほどだったらいいんだけどね〜。

 

 
 
 

母の家庭菜園の玉ねぎが豊作だ。妹のリクエストで紫のも作っている。土から抜いたばかりの玉ねぎはぷんぷんと匂い、持って帰る電車の中でも新聞紙の中から新鮮すぎる匂いが、溢れていないか気にかかるくらいだ。
さて、玉ねぎをたくさん使う料理…って? 一人暮らしの身でそうそう食べれるものではないけれど、他の野菜もたくさん入れて鍋いっぱい作るラタトゥーユ(フランス風?トマト煮込み)が気に入っている。先日も友人が訪れ、ランチに出した冷たいラタトゥーユが好評だった。もちろん、半分お世辞だとは思うけど…。夏野菜がたっぷり食べれていいと思うよ。
オリーブオイルでニンニクと玉ねぎをたっぷり炒めて、トマト缶一缶入れて、トマト缶を洗うようにワインか料理酒を加え、ぐつぐつ煮る。ブイヨンとローリエでなんとなく味を調える。他にはズッキーニやパプリカ、なすびやシメジ、エリンギも良い。お鍋いっぱいの野菜が半分くらいになったら出来上がりだ。砂糖とお酢を加えるのが私流。酸味が夏向きの料理だと思っているけど、正しい作り方を実は知らない。カフェご飯で食べた味を想像して作って、そのまま自分の定番にしてしまった。
アツアツもおいしいけど翌日冷やしたラタトゥーユをパンに乗せて食べるのも好き。おかずのない時にご飯にかけてハヤシライス風に食するのも、良いアイデアだと思っている。夏野菜がたくさん手に入った時はお試しあれ。

 

 
 
 

そろそろ梅雨入りでしょうか。扇子を使っても風が少し生ぬるく湿気を帯びている。手描き扇子の注文もぽつぽつ続き、この季節になると、そうだ!扇子が欲しい!と思うようでお声がかかる。エコなクールビズアイテムとして今年も活躍してほしい。
今週の絵手紙コラムは、サッカーの中継を見ながら描いている。大量得点に日本チームがやけに強くなったように思える。日本チームのキーパーが全然テレビに映らない…ことはいいことなんだね。
ザッケローニ監督のインタビューを見ながら、イタリア・マテーラのタクシードライバーとサッカーについて話したことを思い出す。話したと言ってもイタリア語オンリーの会話は会話になってはおらず、思いついた単語を羅列した珍道中だった。そもそも「サッカー」という言葉さえ通じない。そうなの!「サッカー」は世界共通じゃないのね。(すみません…そんなレベルで)…え〜〜〜と。イタリア語でサッカー…って。そうだ!「カルチョだ!」日本の代表チームの監督が、御存じだと思うけどイタリア人で、ずっと負け知らずだからみんなに親しまれていて、日本人はイタリアのサッカーにあこがれている。さあーて、この中で分かるイタリア語の単語…って「監督」…英語でさえ思い出せない。名前でいいか。「ザッケローニはイタリア人」「日本人はザッケローニとイタリア人が好き」「イタリアのサッカーが気に入っている」「ファンタジスタ・デルピエロが気に入っている」「デルピエロとザッケローニは勝つ」…なんだかそんなわけのわからない会話?で場をつないだような。そんなことを思い出しながらサッカー中継を見ていた。

 

 
 
 

子供の頃には分からなかった美味しさに、年をとって気付き、好物になることは珍しくない。私にとってそれは、「らっきょ・オリーブ・花山椒」。
先月イタリア帰りの私に、ああ日本の味だわ~ 帰ってきて良かった〜!と感動を与えてくれた御馳走に遭遇!(何度も言うがイタリア滞在は2年ではなく2ヶ月なので、日本の味に対する恋しさは少々大げさだが…)超グルメな知人が、ほんの限られた時期に京都の料亭あたりでしか、口にできない花山椒を京都から取り寄せ、それをたっぷり使った高級和牛のしゃぶしゃぶをふるまってくれたのだ。香り高い山椒の新芽を「木の芽」と呼んで香り付けに一葉、筍のたいたんに乗せたり、ちらしずしに飾ったり。実山椒はシラスと佃煮にしたちりめん山椒が有名だ。秋になると山椒の実が熟して割れ、皮を粉にした香辛料となり、うなぎの蒲焼きなどに振りかける粉山椒になるのだ。
それに引き換えあまり知られていないのが花山椒。花は小さな黄色いミモザのつぼみのようで存在感は控えめだが、ほんの数日の短い時期に摘んで食するのは、やはり相当贅沢な旬な味と言えるだろう。しゃぶしゃぶ鍋の中でそれは、完全に主役で、目にも鮮やかな黄色と黄緑。突き抜ける辛さも格別に「しびれる〜〜!」という感じだった。
そろそろイタリア気分は置いといて〜と思っていたら、イタリア北部・エミリアロマーニャ州に地震のニュース(5月20日・29日M6)。歴史的建造物が倒壊しチーズ工場などで被害が出ている様子。被災地の近く州都ボローニャはフィレンツェからも近く、何度も電車の乗り換えなどで通ったところだ。心配になってホームステェイ先だったフィレンツェのCinziaや学友にメールをしてみたが、フィレンツェは心配ないようだ。ああ。どこにいても天災は降ってくるんだな…本当に隣り合わせ。被害に遭われた方にお見舞い申し上げます。

 

 
 
 

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